来客

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来客

(嫌だなぁ。またお客さんが来たようだ・・・今度はどんなお客さんだろう) 僕はガチャガチャと玄関のかぎを開ける音で目が覚めた。 入って来たのは、今までも何回か見た事のあるひょろりと痩せぎすのスーツ姿の男。年齢は二十半ばといった所か。色白でかなりの男前。この男は不動産屋さんらしい。一緒に入って来る人達がいつもそう呼んでいるから、僕もそう呼んでいる。 その不動産屋さんに促され入って来たのは三人家族だった。父親と母親。母親の隣には小さな女の子がいる。父親は不動産屋さんと話をするのが忙しそうで、二人並んで家の中に入って来た。その後に続く母親は、周りを吟味するように女の子の手を取りながら入ってくる。 女の子は、今の状況が理解していないようで母親に連れていかれるがまま歩いている。 (あれ?あの子は何を持っているんだろう) 僕は、女の子が手にしている籠が気になった。女の子が持つには少し大きい籠だ。籠の底は平らだが、その上はアーチ状になっている。筒のような形だ。女の子は、歩くたびにその籠を気にしているように見える。奥のリビングの部屋で、不動産屋さんは父親に熱心にこの家の良さと、交通の利便性などを熱心に話している。話を聞いている父親は相槌を打ちながらもリビングにある二つの窓を開け、外の様子などのチェックに余念がない。 母親の方はリビングまで来たのはいいが、その手前にあるキッチンの方を見ている。 どの家族が入ってきても大抵女は同じ動作をする。収納や使い勝手の確認である。僕には理解できないが、母親の城でもあるキッチンの場所チェックは女の仕事らしい。 女の子がいつの間にかいないのに気がつき探す。 いた。 女の子はこの家で唯一、一つだけある部屋。和室にいた。和室の真ん中に座り、持っていた籠の中を覗いている。
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