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『なら…三成殿は勘違いで奏旅を抱き、この子供は勘違いで出来たという事になりますが?』
小十郎の言葉に、俺の脳ミソは冷静に考える事を放棄した。
否定も肯定もしない三成。
『……俺…俺は…お前から…勘違いの愛情を貰って…喜んでたのか?』
無言の三成。
『今更ッ…今更そんな事言わないでよッ!!勘違いの愛情で…勘違いの優しさでッ…俺は満たされてッ…喜んでッ…ソレを支えにして……お前までッ…お前まで私を絶望させるのかッ!!』
『「絶望」…?「私」…?奏…旅?』
訝しげな顔で俺を見る成実。
意味不明に沸き上がる怒り。
『あの男の名を口にするなッ!!』
『「あの男の名」…?誰の事です?』
『うるさいッ!!うるさいッ!!うるさいッ!!うるさいッ!!うるさいッ!!貴様等とてあの男と変わらぬッ!!優しい顔でッ…優しい言葉で私を騙しッ…奪うのだッ!!』
『奏旅ッ…!!落ち着けッ!!』
『私に向かって誰の名を呼んでいるッ!!私はッ…私はッ……!!』
遠退く小十郎の声。
俺の言葉は誰の言葉?
……「私」という「俺」は「誰」?
スローモーションで過ぎる回りの景色。
ああ…このまま倒れたら…窓枠から落ちて、畳に打ち付けられるなぁ。
薄れゆく意識の中で、誰かの笑顔を見た気がした。
「愛情」なんて……
「勘違い」の産物だ
美しい幻想に縋る事で
人は偽りの安寧を求める
「愛情」も「神」と変わらない
誰も「実像」を知らないのに
その存在を肯定し
縋らなければ
生きては いけない
心の弱さを「祈り」に託し
「誰か私を…救って(愛して)下さい」
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