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「こんなんじゃあ、遥花に怒られるな」
「……洋介」
「ありがとな、俊。俺は大丈夫だから。今度は一緒にあの場所に花を置きに行こう」
洋介はそう言って、静かに笑った。それでも僕は不安を拭えはしなかった。
「洋介……追わないでよ」
僕の言葉に洋介が僅かに目を見開き、それから「ああ、大丈夫。そんなことはしない」とはっきり言った。
僕は強く握っていた洋介の肩からだらりと手を離す。
自分のしたことが正しかったのかどうか分からない。それでも洋介の言葉には救われたことは間違いなかった。
ふいに洋介が仏壇に振り返る。その気配に僕も一緒にそちらを見た。
「やっと、来たんだな」
明るい口調で洋介が言った。
洋介の視線の先には、白猫のキーホルダーの付いた鍵が置かれていた。
終
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