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「妃となって、ボクを支えてくれるのも立派な王国に仕える者ではないかな?」
「申し訳ありません。王子。私には仕事がありますので、今はまだ」
クラウディアはスッと立ち上がり、エリックの前から去った。エリックはクラウディアを呼び止めようとするも、どう声をかけたら良いのか方法が思いつかなかった。
公にはしていないが、クラウディアのことをエリックは愛していた。そして、彼女もまた王子を愛していた。だけど、それは許されることのない愛。騎士と王子が恋仲になるなどあってならない。
周囲の目もある。エリックがクラウディアを愛していると知られたら、どんな目で見られるか。事実、それを良く思わない者もいた。王子には騎士団長より相応しい人がいる。王国にとって一騎士でしかない彼女に熱を上げるなど、王国の信用を揺らぎかねない、由々しき事態である。
「失敗したか」
大臣は悔しそうに立ち去るクラウディアを柱の陰から見送る。御前試合で真剣を用いて戦うよう提案したのは彼であった。命を奪うとまではいかずとも、再起できないまでのケガでも負わせてやればいいと思っていた。相手が騎士団長とはいえ、所詮は女。大の男を使えば、ケガを追わせるなど容易いことだと思っていた。だが、その結果は知っての通り。
「クラウディア団長には早いところ、引退してもらわなければ」
事は王国の信用に関わる。
ここで、戦争の一つでも起きてくれたらクラウディアを亡き者にする口実が出来たというのに、残念ながらここ数十年、戦争というのは起きていない。恐らく、これから先も起こることはないだろう。それだけ、大陸は平和なのだ。
「いかがなさいますか?」
クラウディアとエリックの仲。それを裂こうとする者は大臣だけではない。城に何人もいた。大臣は反エリクラ派のリーダー格である。
「手はまだある。暗殺だ」
「暗殺ですか?さすがに、それは」
暗殺という物騒な言葉に部下は気が引けた。クラウディアとエリックが結ばれることには反対しているが、彼女の有能さを知っているから。いくら、仲を裂くためとはいえ、有望な人材を消すことは賛成しかねる。
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