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それに、クラウディアの実力は知っている。御前試合でも分かるように、彼女を暗殺できる者がいるとは思えなかった。暗殺に失敗でもしたら、たちまち立場が危うくなのこともみえている。暗殺は最終手段に用いるものであって、時期早々ではないのか。
「安心しろ。失敗しても、私たちの関与が疑われなければよい。すでに、手筈は整えてある」
「手筈ですか?」
「忍の者を雇った」
忍の者。その言葉に、部下の顔が強ばる。
忍の者―――それは王国には存在しない役職である。風のウワサぐらいでしか聞いたことがない。他国の暗殺者の呼び名で、その実力は折り紙付きだという。だが、真に優れているのは彼らがどんな拷問にも屈しないことだ。捕まえることができても、自害するか殺されても口を割らないかのどちらか。忍の者による暗殺ならば、大臣からの依頼があったことが、外部に知られることはない。彼らはただ待っているだけでいい。成果の報告を。失敗したにしろ、成功したにしろ、自分たちに害が及ぶことはない。
身体が熱くなる。エリックに触れられたところから全身に熱が広がる。
熱い。熱い。熱い。熱くて身体がどうにかなってしまいそうだ。
いつもそうだ。エリックに褒められ、触れられ、愛された時、身体がどうしようもなく熱くなる。心が疼いて、沸き上がる欲情を抑えきれない。
「はぁ、はぁ」
こうして、ただ歩いているだけなのに、口から漏れるのは甘い吐息。このまま、甲冑を脱いで身体に触れることができたら、どんなに気持ちいだろうか。想像しただけで、ますます身体が熱く、疼いてしまう。
廊下を歩いている間も行き交う城の者からの視線がますます、私を欲情させる。
(見るな。見ないでくれ。そんな性欲的な目でこの私を辱めるな!)
澄ました顔で歩くクラウディアの歩調は自然と早くなる。人々の目に耐えられず。そして、今すぐに欲情した気持ちを発散させたい。
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