第1話 騎士には剣を――― 作家にはペンを―――

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 クラウディアの部屋は一般の騎士よりも上等な部屋が割り当てられていた。頑丈な鉄の扉に石造りの分厚い壁。それらが、室内の音を全て外に漏らさない。かつては、作戦会議を行う為に使われていた部屋らしいが、今は作戦を指揮する立場である騎士団長の部屋として割り当てられた。頑丈で決して音が漏れない仕組みのこの部屋は、中で何が起きても誰も知りようがなかった。  そのような部屋がクラウディアに当てられた背後に大臣の思惑が働いていようとは、誰も思いもしない。  大臣の思惑が働いた部屋割りでだが、クラウディアからしてみればとっても都合が良かった。誰かに部屋で何をしているのか知られたくなかったから。  もし知られでもしたら、今まで築いてきたものを全て失うことなる。 「はぁ、はぁ・・・・・・」  部屋に着くなり、クラウディアは身に纏った甲冑を脱ぎ捨てる。胸当てが外されると、露わになるのは育ちのいい胸。戦うのに邪魔だから胸当てをして少しでも小さく見せていた。 (また少し大きくなったような気がする)  特注で作らせた胸当て。それを用いても胸を押さえていられないほどに、また生長しているような気がしてならない。  胸を初めとする、ウエスト、ヒップそれらは美しい形に整っている。甲冑を着ている間は誰も気づかないが、それらを脱ぎ捨てた時に現れるプロポーションは多くの男の目を惹くことだろう。 「これはもういい」  人前では騎士の誇りだと言っていた剣も、部屋ではただ重いだけの邪魔な鉄の板でしかない。クラウディアは鞘ごと壁に立てかける。 「う、ううん」  もう身体が疼いてどうしようもない。  早く。持ちたい。早く、早く。アレを持たせてくれ。  誰も部屋の中には入れない。掃除も全て自分で済ませている。それも、全て部屋の中にあるものを他人に見られないようにするため。もし、これが他の人の目に触れるようなことがあれば、騎士団長としてこれまで築きあげてきた名誉が全て失ってしまう。 「エリック王子。お許しください。こんなにもおぞましい行為に走る私を」  愛するエリックに謝りつつも、クラウディアは止まらなかった。止められなかった。欲情を。剣を振っているだけでは満足できない。この内側から湧き出るモノを発散させるには、これしかない。
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