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女公爵と夫様方がいなくなると、頭を押さえていたアシュレイ様がスクッと立ち上がりました。
涙目ではありますが、ニッコリしています。
「あ~やっと邪魔者がいなくなった…。飲み物でも貰う?それともお菓子食べる?王宮のお菓子はあんまり美味しくないけど、日々進化してるから、吐き出すほど酷くはないよ?はい、あ~ん!」
「え…人の目を気にしないといけないと思います!」
アシュレイ様が言ってた言葉でしょ?
忘れてどうします?
「………二人の世界に他人はいないよ?」
「………周りにいます」
「………俺たちの周りは壁だから気にしない。はい、あ~ん」
「人を壁なんて言っては駄目だと思います!ご挨拶致しましょう!」
渋るアシュレイ様を半ば引き摺り、同年代の高位の子息令嬢の元に向かいました。
「久し振り、レイ」
声をかけてきた人は、蜜色の髪の少し年上の方。
「あ、フィル!久し振り!伯父上と伯母上は元気か?」
「当たり前だよ。アレ見れば解るでしょ?」
フィルと呼ばれた方が指差す方向を見ると…40手前くらいの方でしょうか。
蜜色の髪の方が女公爵に抱きついていて、夫様方がひっぺがそうと躍起になっていました。
「…伯父上、相変わらずシスコン卒業できないか…」
「…ムリだよ。あの人も筋金入りだもの。母上も『あれだけ妹命なら浮気の心配もないから良いですわ!』とか言ってて放置だしね」
呆れていらっしゃるのか諦めていらっしゃるのか、シラ~っとしたお顔のフィル様。
おそらくこの方も苦労性ですわね。
「ところでさ?そちらのご令嬢、エリア·ラナ公女に似てらっしゃるけど…?」
いけない、ご挨拶!
「失礼しました!私はフィーナ·メイ·ギトスと申します。父大公の末なのです。よろしくお願いします」
優雅に見えるように心掛け、腰を落とすと
「俺の恋人!」
「違いますよ?」
「うん。これからだよね?解ってるよ?」
「………」
物凄いポジティブシンキングで、もう、なんと言っていいやら…
「…諦めた方が楽だよ?あの叔母上の血を引いて、おっそろしく粘着する言動を叩き込まれた叔父上たちの息子は、絶対引かない。叔母上たちに、君、気に入られたんでしょ?でなかったら、あの悪魔たちの息子が粘着するはずないもの。元々本人も女性に煩くってねぇ…。で、公爵一家に気に入られた…。うん、頑張ってね」
………憐れまれた気がします。
「よし!従兄にも認められた!仲良くしようね、メイ」
「認められたのではなく、諦めろ。と言われたのです!」
「…やだなぁ。同じことでしょ?」
「違いますよ!」
「ぜ~んぶ諦めた方が楽だよ?」
「うん、そう!諦めて仲良くしようね!」
「………」
フィル様と続くアシュレイ様の言葉に、スコーン…と身体中の気力が抜けました。
…周りを見ても誰も助けてくれませんでした…。
ぐったり。
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