プロポーズ

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フンッと鼻息荒くブランコを先程よりも激しく漕ぎ出した私に、トーヤ君は「あっ!」と声出し、星のようにキラキラとした瞳で私を見上げる。 「家に帰りたくないなら、俺の家に帰ればいいんじゃない?」 「は?」 「うん!うん!」と名案だとばかりに頷くツンツン頭に、漕いでいた足を止める。 「だから、早く帰ろうよ!お腹減ったし!!」と言うトーヤ君の顔には、これで面倒事が片付いたというような安堵感に包まれていて。私は、なんだか納得いかない。 「なんで私がトーヤ君の家に帰んなきゃいけないの!?」 「え、ダメなの?」 「…ダメっていうか、別に家族とかじゃないじゃん!!」 「面倒くさいなぁ」と小さく零したトーヤ君に再び苛立ち、もう絶対に帰らないとヘソを曲げまくった。お母さんもお父さんも、トーヤ君まで呆れた顔で私を見やがって。 しばらく無心でブランコを漕ぎまくったら、結構な高さまで上がってしまったので怖くなって足を止めた。 次第に視界が下へと降りていき、揺れるたびに風がふわりと前髪を上げる。 スンッと鼻で空気を吸い込めば、それはもう秋の匂いがした。 怖くないくらいに下がったブランコの隣で、トーヤ君は何やら、ズボンのポケットをゴソゴソと探っている。
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