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今度は何だと、止まり始めたブランコでゆらゆら揺れていると、トーヤ君は「あった、あった!」と探し物を見つけたらしい。
「俺の家に帰る理由がないなら、俺とケッコンすればいいんじゃない?」
完全に止まったブランコに座る私に、サラッと告白をするトーヤ君に思考が停止した。
「はい、これ!」
ポケットを探っていた手から差し出されたのは、プラスチックの黄色い輪っかに派手なピンク色のリボンがついたオモチャの指輪だった。
「…何これ。」
「え、ケッコン指輪。」
自信満々に言う、トーヤ君に何と言ったらいいのか分からない。口をポカーンと開けてトーヤ君のくっきりとした瞳を見つめていれば、私の手に無理矢理それを握らせる。
「はい、じゃあ帰るよー!」
やっと家に帰れるとばかりに解放感ある声を出して、トーヤ君はそのまま私の手を引っ張りブランコから立たせる。
ベンチに放置していたランドセルを私の手を握っていない方の手で肩にかけ、スタコラ歩くトーヤ君に引っ張られながら公園を出た。
それは凄く、無駄のない動きだった。
「もうお腹ペコペコだー、」ナヨナヨした声を上げるトーヤ君は本当に家に帰りたくて仕方なかった様子で。
私は、深く溜息を吐いた。
確か、月曜日にやっているドラマの台詞で言ってた。「これだから、男は!」って。
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