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公園から出て、広いアスファルトをトーヤ君に引っ張られて歩けば少しの違和感に気づいた。
そういえば、もう夜なのに今日はなんだか明るい気がする。
見上げれば、その正体は藍色の中で大きく、まんまるに光を放っていた。
満月だ!
うわぁーと見惚れていれば、私を引っ張って前を歩くトーヤ君もその存在に気づいて「すげぇー、まんまる!」と声を上げている。
その光はトーヤ君の色素の薄いツンツン頭にあたり、まるでお月様の真似するように仄かに毛先が金色がかった。
そんな光景にふふっと小さく笑った声は、トーヤ君に届かない。
私は握りしめていた、貰ったばかりのオモチャの指輪を光に照らすように持ち上げる。
小さな輪っかの中にピッタリと嵌った満月が、なんだか可愛い。
「ねぇ、この指輪なんで持ってたの?」
「今日ガチャガチャやったら、出てきたんだ」
「…ガチャガチャねぇ、」
「銀色のカッケーやつが欲しかったんだけど、外れちゃったからカナちゃんにあげる!」
カラカラと悪気なく話すトーヤ君に、またフツフツと苛立ちを感じたけど、トーヤ君が振り向いてふわりと笑うものだから苛立ちはシューッと音を立てて萎んでしまう。
まぁ、いいか。私たちフウフになるんだからね!
気付けば、家に帰りたくなかった苛立ちも何処かへ行ってしまって、トーヤ君から貰ったケッコン指輪をそっと薬指につけてみる。
月明かりに照らされたアスファルトを、まるでバージンロードを歩くかのように、繋ぐ手にぎゅっと力を込めて丁寧に踏みしめた。
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