手ぐすね引いて待つ

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 今日も会社に泊まりこみで仕事をと思っていたら、家に帰れと柴からの社長命令だ。 「そうですよ。今日は俺が泊まっていきますから」  と水瀬が亮汰の背中を押した。  疲れが溜まり、隈だけでなく顔色も悪かったから、流石にストップがかかったか。  柴や加藤も疲れがたまっているだろうにと二人を見るが、はやく帰れと言われてしまう。 「わかりました。今日は帰ります」  荷物を手にし、お疲れ様でしたと居残り組に声を掛けて会社を後にした。  会社から自転車で通える距離に亮汰の住むマンションはある。  帰るとソファーに座り、メールのチェックをしはじめる。  メールは三件。そのうち、二件はすぐに返信をし、一件は水瀬なので無視をすることにした。  テーブルにスマートフォンを置き、水を飲みにキッチンへと向かう。  そこにカレンダーがあり、赤ペンを取り出して丸を付ける。  隆也の帰国の日。忙しいからあっという間にその日がきてしまいそうだなと、丸を付けた場所を指ではじく。  冷蔵庫からペットボトルの水を取り出してキャップを外して一口。  すると、来客を告げるチャイムが聞こえる。モニターに映る相手を見て、急いで玄関のドアを開ける。 「いらっしゃい」 「こんばんわ、亮ちゃん」  彼女の名は唯香(ゆいか)といい、隆也が帰国する理由となった人だ。  水瀬と亮汰は同じ空手道場に通っており、そこの仲間たちとたまに飲みに行くことがあるのだが、そこで偶然に出会ったのが唯香だった。二人は幼馴染で、一緒に飲もうということになった。  ホンワカとした可愛い子で、アパレルショップの店員をしているという。  それならと弟の(みき)を誘い、彼女が務める店へ行くようになり、急接近したという訳だ。 「ご飯」 「助かるわ。上がれよ」 「うん」  今は店をやめて、花嫁修業と料理を頑張っている。  忙しい亮汰の為に、たくさんおかずを作って持ってきてくれるのだ。
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