手ぐすね引いて待つ

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 水瀬は一番仲の良い後輩だ。何度も家に遊びに来ているし泊まることもある。  ゆえに勝手知ったる他人の部屋というわけだ。  焼酎を飲んで酔っぱらった水瀬を寝室へと運び、自分はソファーで休もうと思ったら腕を掴まれて、結局は朝まで抱き枕状態だった。  隣で気持ち良く眠っている水瀬を見ていると腹が立つ。 「こら、起きろ」 「ふがっ」  鼻をつまんでやれば、苦しくて目を覚ました。 「おはようございます……」  大きなあくびをし、サイドボードに置かれたスマートフォンを手にして、 「ありゃ、もう九時ですね」  とベッドから起きあがった。 「どっかで朝飯を食ってから店に行くか」 「そうしましょ」  確か行く途中でファミレスがあったはずだ。着替えを済ませて水瀬が車のキーを取り出した。
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