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もはや定着した「あやめちゃん」呼び。
いつも通り阿吽の呼吸で仕事ができる。
誰も、私が恋していた事も、失恋した事も知らない。
私の日常は今日もいつも通りだ。
そんなある日、
不協和音は突然響く。
母からの電話だ。
「いい人がいらっしゃるの。お見合いなさい。」
母の声は弾んでいるように聞こえた。
だが私は考えられなかった。
私はこんなにもあの人の事が好きなのに。
一度は断ったのだが、返事は待つから少し考えておいて、と言われてしまった。
考えても、仕方ない。あの人が好き。
けれどこの恋は決して報われない。
『2番目に好きな人と結婚すると幸せになれる』
何かで言っていたこの言葉。
何故このタイミングで思い出してしまうのか。
あの人との恋がこれ以上進めないのなら、違う道に進むと忘れる事ができるのか?
私は悩んだ。
顔には出さないが、仕事中にもふと思い出して悩む。
あの人の顔を見ては、更に悩む。
「あやめちゃん」と呼ばれ始めてから、はや一年。
その間に私たちの関係は何も変わらない。
これ以上を望むことを諦めるほうが楽なのだろうか。
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