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私は結婚した。
2番目に好きな人は夫になった。
私は名字が変わった。
だけど、ふとした時に心に閉まった箱が蓋を開けるのだ。
あの人の笑顔を思い出す。
あの人の声を思い出す。
その度に私は複雑な心境になるから、夫をちゃんと愛している、と唱えずにはいられない。
あの人に渡せなかった手紙も捨てようと思うのに、いつも捨てられない。
それから子どもが産まれた。
それでも時々あの人の事を思い出す。
そして孫が出来た。
あの人の思い出は未だに色褪せていない。
むしろ幾年月の間に美化され過ぎたのか、
とてもとても愛おしく、
とてもとても美しい思い出になっていた。
そのせいか思い出すだけで、キュンと胸が鳴るのは気のせいだろうか。
自分でも、こんなおばあちゃんになってまで可笑しいと笑ってしまう。
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