Zircaloy(ジルカロイ)

5/10
前へ
/10ページ
次へ
烈火に炙られた湯気が、 男の顔に容赦なくかかる。 幾度も熱風に当たった箇所が焼けただれ、 頬からピンク色の肉が覗いていた。 毎秒待ち受ける拷問にも、男は動じない。 生贄のジャンヌ・ダルクは、 身じろぎもせず見開いた目で窯を凝視する。 爬虫類のように黒々としたそれは、痩せ細った体の中でいやに目立つ。 私としては断固願い下げなものだが、 好事家のこの男は、生きたまま鍋の具になることを望んでいるらしい。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加