晩餐会と嘆きのお姫さま

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晩餐会と嘆きのお姫さま

ここはテイラー家という貴族の屋敷。テイラー家の長女の婚約が決まり、今夜から3日間、テイラー家では婚約祝いの晩餐会が行われる。 煌びやかな大広間には多くの貴族が料理と雑談を楽しみ、使用人たちは忙しなく動き回る。 近くの小部屋では、ブロンドの髪に青い瞳が美しい少女が物憂げな目で星空を眺めている。ピンク色の華やかなドレスで着飾っているというのに、気分は晴れないようだ。 「どうにか、ならないものかしら……?」 少女はポツリと呟き、ため息をつく。彼女こそがテイラー家の長女、オリヴィア・テイラーである。この晩餐会の主役なのだが、ずっとこの調子である。 「オリヴィア、そろそろだ」 ノックの音と共に、父であるケビンの声が聞こえた。 「はい。今行きます」 オリヴィアはもう1度ため息をつくと、笑顔を作って小部屋から出た。 「顔色が優れないな、大丈夫か?」 「皆様の前に出ると思うと、緊張してしまって……」 「いいか、オリヴィア。お前はテイラー家の誇りだ、胸を張って堂々としていなさい。お前は国王の前に出しても恥ずかしくない、立派な私の娘だ」 ケビンはオリヴィアの肩を掴みながら、力強く言う。 「はい、お父様」 「いい返事だ。では行こうか」 「はい」 ふたりは大広間に足を踏み入れる。すると美しいブラウンの髪の好青年が、ゆったりと歩み寄る。 「待っていたよ、オリヴィア。今日の君は一段と綺麗だ」 「まぁ、シャノン様ったら……」 オリヴィアが愛想笑いをむけるこの青年は、シャノン・キャンベル。18歳にして伯爵の爵位を持つ上流貴族だ。今年16歳になったオリヴィアは彼と政略婚をしなければならない。
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