晩餐会と嘆きのお姫さま

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「さぁ、お手をどうぞ」 「ありがとうございます」 シャノンはオリヴィアの手を取ると、壇上に上がった。ケビンもそれに続く。にぎやかだった会場が静まり返り、誰もがオリヴィア達に注目した。 (うぅ……緊張する……) 緊張しているオリヴィアの手を、シャノンは優しく握る。顔をそちらに向ければシャノンは優しく微笑み、“大丈夫だよ”と口を動かした。少しだけ緊張が解けると同時に、オリヴィアは罪悪感を覚える。 (シャノン様は優しくて、聡明で、素敵なお方……。神様、お父様、シャノン様……ごめんなさい、好きになれません) オリヴィアとシャノンは幼なじみで、オリヴィアは昔からシャノンを兄のように慕っていた。それゆえに、どうしてもシャノンを愛せないでいるのだ。 「皆様、今宵はお集まりいただき、ありがとうございます。私の自慢のひとり娘オリヴィアと、シャノン・キャンベル様の婚約が正式に決まったことを、皆様にお伝えいたします」 ケビンがそう言って一礼すると、拍手が沸き起こる。 ケビンが1歩下がると、ふたりが前に出る。 「可憐で美しいオリヴィア姫と結ばれること、心の底から嬉しく思います。オリヴィア姫を生涯をかけて幸せにすると、皆様の前で誓わせていただきます」 シャノンはそう言って熱烈な視線をオリヴィアに向ける。 「シャノン様のそばにいられること、幸せに思います。これからはキャンベル家の人間として、より精進してまいります」 オリヴィアが言い終えると、歓声と拍手が大広間に響き渡る。 壇上から降りると、オリヴィアはシャノンと共に挨拶に回る。 「オリヴィア姫、お美しくなられて」 「シャノン様とお似合いですわ」 「この度はご婚約おめでとうございます」 「これでテイラー家も安泰ですな」 次々に投げかけられる言葉にオリヴィアは内心うんざりしながら、笑顔で言葉を返していく。
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