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ゲーム開始
ジャレッドは用意された客間に、オリヴィアを招き入れる。
「さぁ、どうぞ」
「失礼します」
部屋に入ると、小さな城が目に飛び込む。オフホワイトの煉瓦に真っ赤な三角の屋根の城は、童話の世界から切り抜いてきたような印象を与える。低いテーブルに乗っているからオリヴィアの目線の高さにあるが、城の高さは1メートルほどだろう。
「まぁ、可愛いお城ですね。これも、見世物のひとつなのですか?」
「そんなところです。ちなみにこれは城ではなく、時計塔なのですよ。ほら、ここに時計があるでしょう?」
ジャレッドは1番高い塔を指さした。そこには少し変わった時計がある。針の先端には宝石で作られた真っ赤なハート、3時と9時には青、12時と6時には赤の宝石がはめ込まれているのだ。
「綺麗な時計ですね」
「ありがとうございます。オリヴィア姫に褒めていただけるのなら、作ったかいがあったというものです」
「これ、ジャレッドが作ったのですか!?」
驚いてジャレッドを見ると、彼はにこやかに頷いた。
「えぇ、そうですよ。さて、ゲームの説明をしましょうか。これからオリヴィア姫に参加していただくのは、Jester Gameです」
「Jester Game……? 聞いたことがありません」
「そうでしょうね。今からオリヴィア姫にはこの時計塔に入ってもらいます」
「待ってください! こんな小さな時計塔に入るだなんて、無理な話です」
オリヴィアは思わずジャレッドの説明をさえぎった。
「もちろん、このまま入れだなんて無理な話です。私の奇術で、オリヴィア姫を小さくするのですよ」
笑顔で説明するジャレッドだが、オリヴィアの不安は大きくなるばかりだ。
「そんなことが、可能なのですか? もし失敗したり、戻れなくなったりしたら……」
「もちろん可能ですし、失敗したことはありません。怖いのでしたら、無理にとはいいませんよ」
優しい微笑みと口調のジャレッドだが、オリヴィアにはそれが挑発に思えてしまった。
「いいえ、怖くなんてありません。大丈夫です」
「左様ですか。ではルールの説明に戻ります。時計塔の中には、たくさんのジェスターがいます。困ったことに、彼らは嘘つきが多いのです。もちろん真実のみを話す方もいらっしゃいますがね。オリヴィア姫には彼らと話して真実を見極め、時計塔のオルゴールを鳴らしてもらいます」
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