ダイヤモンド

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オゼオ家の館の中庭 オゼオと両親登場 オゼオと父は中庭、母は中庭に面した部屋の中 オゼオ 父さん、終わった? オゼオの父 いや、まだだ。もう少し時間がかかりそうだ。 オゼオ 本当に溶けるの? オゼオの父 やってみなきゃ分からない。しかし、私は熔けると思う。たとえ天から落としても壊れぬダイヤモンドでも、物質として存在しているのであれば、熔けないはずがない。 オゼオの父 オゼオ、とりあえず服着替えなさい。――あんた、ちゃんと裏から通ってきたでしょうね。 オゼオ うん、一応。 オゼオの母 ほら、じゃあ、早く着替えなさい。 オゼオ えー、このままでいいよ。 オゼオの母 駄目駄目。ちゃんとした服を着ないと、よそ様に笑われますよ。 オゼオ 大丈夫。家の中だし。 オゼオの母 駄目です。これからお客様がお見えになります。 オゼオ 隠れてればいいじゃんよ。 オゼオの母 いいじゃんよ、じゃありません。その言葉遣いも戻しなさい。 オゼオの父 オゼオ、一応お偉いさんがいらっしゃるのだ。いち貴族の男なら、滋養さを会得しなければいけない。 オゼオ はいはい、父上母上、立派な貴族になりますよ。 オゼオはける オゼオの母 貴方もその実験、お客様がいらっしゃる前に終わりますの。 オゼオの父 いや、大丈夫だ。今度のお偉いさんは、私の研究に興味を示されている方だ。実験途中の方が寧ろ、都合がいい。 オゼオの母 物好きな方もいらっしゃるのですね。 オゼオの父 おいおい、そう言うな。君だって、こんな僕の所に来たのだ。もしそれが物好きなら、君にはもっと物好きの烙印が押されるぞ。 オゼオの母 私は貴方のことを愛してますよ。この思いの戦場では、私に敵う者などいません。――けれど、その実験とやらは、私にはどうも難しくて、理解できないものなのです。 オゼオの父 理解できないものが、全てへんてこな物ではない。芸術だってそうだ。一見、ごちゃごちゃ描いているようで、しかしよく見れば、よく知れば、素晴らしいものは沢山ある。自分が解らないものへの拒絶は、怠惰と同じだ。 オゼオの母 そうかもしれませんけど…… メイド登場 メイド お客様がいらっしゃいました。 オゼオの母 そう、分かりました。では、客室までご案内お願い。――貴方も早く、煤けた服をなんとかしてください。 オゼオの父とメイドはける
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