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「誰がいい子だって?」
しゃがれた声が突然後ろから聞こえた。
振り返ると、山のように大きな体躯をした大男がいた。
「誰だい?その餓鬼は」
「私の知り合いです」
「おい餓鬼。お前の名前はなんて言うんだい?」
「……」
お姉さんとの約束。
この世界でお姉さん以外の者と話してはいけない。
言われてなければ思わず話していたかもしれない。
無言を貫いた。
「喋ることもできないのかい、この餓鬼は」
「大人しい子なんです」
「へぇ、そうなのかい。さっきまで喋っていたのを俺は知っているっ!さぁ、名前はなんて言うんだい?」
ずずいと顔を近づけて威圧感たっぷりに問いかけてくる。
失神してしまいそうになるのを必死でこらえる。
お姉さんが咄嗟に自分の身を盾にして、背に隠してくれた。
「子供相手にそんなに威圧的にしなくてもいいじゃありませんか」
「俺の問いに答えない餓鬼が悪い」
「怯えているだけです。先を急ぎますので失礼します」
お姉さんに手を引かれ、足早にその場を離れる。
膝が笑っていてうまく歩けない。
何度も転びそうになりながらも、必死に前に足を運ぶ。
どれだけ歩いたか分からない。
周りの風景は相も変わらず真っ白なままで、さっきの神とどれくらい離れたのかさえ感覚がつかめない。
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