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ベッドで寝そべり、桃香は黒彦に髪型について尋ねる。
「ねえ。女性のヘアスタイルに好みはあります?」
「髪か。短いより長い方がいいくらいかな」
「普通そういう人の方が多いですよね。ベリーショートが好きな男の人ってどんなタイプでしょうね」
「そうだな。確かに少数派だろう。おそらく内気で大人しいタイプじゃないのか。スポーティーなショートが好きってことは」
「スポーティーかあ」
昼間の前田ミサキを思い出すがとても活発な様子はなかった。どちらかというと大人しい雰囲気だ。
「髪を切りたいのか?」
「いえ、そういうわけじゃないけど。でもショートもいいかな」
「フッ。やめておけ。ショートは美形じゃないと誤魔化しがきかないぞ」
「えー。ひどーい! ほんとに切っちゃおうかなっ」
ふんっと膨れて背中を向ける桃香を、軽々と身体の上に乗せる。
「きゃっ」
「髪が短いと、騎乗位の時、顔が良く見えていいかもしれないな」
「え? なっ! もう! 切らないです!」
「フフフッ。そうか」
「降ろしてください」
「そう、怒るな」
身体を起こし、黒彦は桃香の柔らかい髪を耳にかけて、頬に口づけをする。
「髪は切らないでくれ。その揺れる髪の隙間から見える顔が好きだから」
耳元で囁かれ、桃香の身体は熱くなってくる。
「ん、もう……」
好きだといわれると桃香の怒りはおさまってしまった。言葉を無くしている桃香の口を黒彦はそっと口づけで塞ぐ。
身体中を愛撫され繋がり、黒彦が絶頂を迎えるときに「お前は――可愛い」と呟かれた。桃香はその言葉にうっとりとし、素晴らしい快感を得ながら黒彦が短い髪で良かったと思う。
身体を重ねるとき、最初の余裕そうな表情と、最後の達するときの苦悩と快感がせめぎ合っているようなセクシーな表情が見えるからだ。そして自分の髪は切らずに、このままでいこうと決めた。
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