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予約時間ピッタリに前田ミサキはやってきた。相変わらずフェミニンなワンピースにベリーショートというミスマッチで、あまり外見に頓着のない白亜でも変だと思っている。
「こんにちは。お願いします」
「いらっしゃい。今日はーって聞くまでもないか……。どうぞシャンプーしますね」
「はいっ」
いつもシャンプーをするのは明美だったが、たまたま初回に明美がおらず白亜がシャンプーをした。その時に彼女は白亜の官能シャンプーに反応せず、大人しかった。他の女性客と違い感じている雰囲気はなく、非常にリラックスしている様子だった。それで明美に代わることなく白亜がシャンプーをしている。
「ガーゼはいらないんでしたよね」
「はい。いらないです」
ミサキの頭をそっとひと撫でし、ぬるめのシャワーをまんべんなくかけ、優しく頭皮を揉んでからシャンプーを泡立てる。ふわっと真っ白い濃厚なクリームのような泡で、頭全体を包み込み優しく揉んでいく。襟足から耳の裏、こめかみから額までゆるゆる揉み洗い、頂点をマッサージしてまた全体を軽く揉む。いつもより丁寧により時間をかけて、エステのようなシャンプーを行った。
ミサキは目を閉じ、今にも眠りに落ちそうなくらいリラックスしている。普通の女性の呼吸はここで荒くなっているが、ミサキの場合、深い呼吸と安定したリズムになっている。
もう一息で眠りに落ちそうなころシャンプーは終わり、柔らかいタオルで頭を包み、身体を起こす。
「お疲れ様でした。じゃ、こちらへどうぞ」
「ふぅあ、はーい」
寝ぼけたような表情でミサキは起き上がり、カットのために場所を移動する。
「どうぞ、これ飲んで」
「あ、ありがとうございます」
白亜は赤斗の作った特製フルーツジュースに黒彦の作った『正直になる薬』を混ぜ込みミサキに勧める。ショットグラスに入った、三口ほどのとろりとした白っぽいジュースは甘い芳香を放っている。すっと手に取り、口にグラスをつけるとき、ミサキが一瞬動きを止めたように見え、白亜はドキリとするが、グラスはそのまま傾けられ空になる。
飲んだのを見計らい、ケープをかけ櫛を入れる。
「うーん。少しは伸びたのかなあ」
「ええ、伸びてますね!」
ふうっとこっそりため息をつき、襟足から髪の毛を指で挟み長さを確認する。
「ところで髪はずっとショートなの?」
「え? 今までですか?」
「うん」
「えーっと、それは……」
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