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言葉を濁している様子に、薬の効きはまだかなと思ったが、そうではなくやはり即効的だった。
「前はロングだったんです」
「へー。この髪質でロングだと綺麗だろうねえ」
「うふっ。自分で言うのもなんですけど自慢の髪でよくモテましたよ?」
「ああ。男は黒髪のロングに弱いしねえ」
さすが黒彦の薬だと感心しながら白亜は話を続ける。
「なんで切っちゃった? もったいないでしょ。あ、ごめん、日本の女の子たちって失恋したら切るんだっけ」
白亜がいた外国では失恋で髪を切る女性がいなかったので、たまに失恋を理由にカットに来る女性に最初驚いた。
「いえ。結果失恋になったかもしれないんですけど、切った後に振られちゃったから」
「そっかー。ショートも素敵だけどねえ」
「男の人は長い髪に女らしさを求めるんでしょうね。ショートだとさっぱりモテなくなっちゃいましたよー」
いつもより軽快なトークをかわすミサキだが、なぜわざわざモテなくなるショートにし続けるのか白亜には分からなかった。
「また、伸ばせばいいじゃない」
「そうなんですけど、髪を伸ばすことがなんだか怖くて」
「恐い?」
「私、前にスピーカー怪人に襲われたんですよ」
「え!? スピーカー怪人に!?」
「そうなんです」
話を聞くと、ミサキは恋人とカラオケボックスに着ていて、その帰りに現れた騒音をまき散らすスピーカー怪人に襲われる。その時に長く美しい髪を引っ張られた。恋人はミサキを助けることも出来ず、一目散に逃げてしまう。ただ、ちょうど駆け付けたシャドウファイブに救われ事なきを得ていた。
「そっか……。スピーカー怪人にか……」
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