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アイボリーとピンクで構成されたロマンチックな部屋で、前田ミサキはワードローブを眺めてため息をつく。
「この髪型とワンピースってほんとに合わないな」
以前のストレートロングだった時はばっちりはまっていたスタイルは、ベリーショートだとちぐはぐだ。まるで中学生の男の子にいきなり女装させたみたいだ。
短いサラサラした髪を撫でる。また伸ばすことを考えるが、スピーカー怪人に引っ張られた怖さを思い出してしまう。
「やっぱり伸ばせないな」
ふうっとため息をつく。髪を切ってから婚活も失敗ばかりだ。髪が長い時は街コンなどでは必ずカップルになってきた。
「だけど……」
いつも付き合って三ヵ月で振られる。清楚で優し気で何より艶やかな黒いストレートロングの髪が男性たちの人気をかっさらうが、身体の関係に到ったってからいつも振られるのだった。
「髪の毛って最初の印象だけなんだよね」
ミサキはベッドで寝ころんでほとんど平らな胸を撫でる。
「ピンクシャドウさん……」
怪人に襲われ、ピンクシャドウに助けてもらい震えるミサキは、彼女(本当は白亜)の豊満な(作り物)の胸に抱かれ髪を撫でられた。あの時の安堵と言ったらなかった。
「あーあ。Bとまで言わないからせめてAカップにならないかなあ」
ミサキはAAカップだった。豆乳や牛乳を飲みマッサージも頑張ったが大きくならなかった。長い髪と柔らかいワンピースはちょうど胸を隠し、なんとなくBカップくらいには見えているようだった。流石に一度の関係で振られることはなかったが、だんだんと男性からフェイドアウトされていった。
怪人に髪を引っ張られた恐怖で髪は切ったが、それに合わせてボーイッシュな服装に変えることは出来なかった。性格が活発ではなく大人しいからだ。つまり外見と中身がきちんと揃っていたにもかかわらず、男性の胸に対する思い込みにより振られてきてしまった。
「ピンクシャドウさんみたいな強くてセクシーで女らしい人になれたらなあ」
叶わない夢と知りながらミサキはピンクシャドウ(白亜)にあこがれを寄せている。
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