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次のミサキのカットの日に、白亜は彼女に『もみの木接骨院』で緑丸の祖父、高橋朱雀が行っている太極拳教室を勧めてみた。教室には桃香と茉莉が通っており、緑丸の恋人である高村里沙も指導者として加わっている。
少し他人本位な気がしないでもないが、ミサキのトラウマを克服する強さと仲間づくりに役に立つはずだと白亜は考えた。もちろん、嫌だと言えばそれ以上勧められることはないが。
「太極拳ですかあ。健康になれそうですね」
「もちろん健康にもいいんだけど、武闘派だからねー。強くなれるよ。師範が強い女性でさー」
「へー。強い女性なんですかあ。ピンクシャドウくらい強いんでしょうかね」
「ああ、ピンクシャドウも太極拳の達人だよー」
「え? そうなんですか?」
「うん」
「ちょっと、いってみようかな」
「いいと思うよー。俺の紹介って言えば大丈夫」
太極拳教室に向かわせることは成功のようだ。前向きな桃香たちと触れ合うことでミサキもきっと自信をもっていくだろう。
カットと一応のセットが終わるとミサキは明るい表情を見せ、次回の予約を取って出て行った。
次回のカットの時にミサキの様子を見ながら出来そうであれば、怪人の登場となる。
「怪人とピンクシャドウと仲間か……。さて、こっちはどうすっかなあー」
この件に関しては桃香と黒彦に協力を求めるのはやめておこうと思っている。
「えーっと暇そうなのはっと」
優しい黄雅がきっと協力してくれるだろう。仲間役に茉莉か理沙どちらに頼もうかとしばらく悩み、理沙に決める。どちらもミサキとタイプが違うがボーイッシュな茉莉より、色気がやけに高くなった理沙の方がミサキに受けが良さそうだ。
理沙も『ヘアーサロン・パール』の客になってくれているので、今度来た時に相談することにする。白亜が理沙に会いに行き相談すれば、野次馬の朱雀がやってきて仲間全体に知れ渡ってしまう恐れがある。そうなると黒彦の耳にも入るかもしれない。理沙は口止めしておけば他言はしないだろう。
綿密な計画を練る。早朝の太極拳教室が終わったころ、少し散歩をしようと理沙にミサキを公園へ連れて行ってもらう。そこへ黄雅の怪人が登場する。多少、理沙に怪人と戦ってもらい、白亜がピンクシャドウとして登場し、本格的に怪人と戦う。理沙にはミサキを安全な位置に連れて行ってもらい、ピンクシャドウが怪人を倒すまで待機する。
「うーん。ちょっと詰めが甘いかなあ」
いい筋書きだが、ミサキがただ守ってもらうだけではトラウマの解消にならないだろう。
「ちょっと荒療治だが……」
やはりミサキにも怪人に立ち向かわせるべきだろうと計画をさらに練り上げることにした。
「よし! 完璧!」
出来上がった計画を早速、黄雅に頼むべく『レモントイズ』に向かった。
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