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一ヶ月ぶりに会うミサキは、どことなく明るく快活な表情を見せる。
「どう? 太極拳やってる?」
長い人差し指と中指でミサキの短い髪をはさみ、ミリ単位の毛先を揃えながら白亜は尋ねる。桃香に様子を聞いていたのでミサキが熱心に通っているのは知っていたが、何気なく会話に織り交ぜる。
「はいっ! すっごく楽しいです。なんか初めてお友達っぽい人が出来たって言うか――」
ミサキは転勤族の家庭の育ったため、あまり親しい友人はいなかった。その場その場で仲良くなれるが知人止まりだったのだ。
桃香を始め、茉莉も理沙も気さくだが心優しくミサキを受け入れていることだろう。
「今度『イタリアントマト』で女子会するんですよ」
「へー。いいねえー」
明るく良く話すようになっているミサキに、やはり仲間は大事なものだと改めて白亜は認識する。これなら次の段階へ進んでも良いだろう。白亜の頼みをすでに理沙は快く引き受けてくれている。黄雅もスタンバイできている。
「これでどうかな」
ミラーでミサキに髪型を確認してもらう。
「ばっちりです! 形がほんと綺麗! 白亜さんってすごいですよね。この長さだと他のお店ちょっとガタガタした感じで、なんかスポーツ刈り?って職場の人に言われちゃって――」
「もう伸ばさないの? 髪質もいいし、ロングのほうが似合ってると思うんだよね。ミサキさんって手入れもマメな感じだしさ」
「そう、ですね。お手入れは苦じゃないですね……」
本人もロングの方がいいと思ってはいるのだろう。しかし髪を伸ばすことを提案すると表情は曇る。
「じゃ、お疲れ様です」
「あ、はい。じゃ、また来月お願いします」
次回の予約を入れてミサキは帰っていった。
「予約の前の週にやるか」
カレンダーを眺めて商店街の休みを確認し、段取りを煮詰めることにした。
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