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こざっぱりとしたシンプルな部屋にはベッドしかない。生活感のなさにミサキは驚く。
「今流行りのミニマリストってやつですか?」
「なにそれ。そんなのはやってるの?」
「さあ、身近な人にはいなさそうなので、わかりませんけど」
「ちゃんと色々あるよ。そこのボタン押してみて」
「これ?」
白い壁に乳首のようについているピンク色のボタンを押すと、低い振動音が聞こえ壁が動き始める。
「え! 何これ! 忍者屋敷?」
壁がからくり扉のように裏と表が入れ替わり、そこには大型のパソコンが複数台とアンティークなタンスがあった。
「最新なのか、レトロなのかわかりませんね」
「いいものには新しいものも古いものもあるしね。でも寝てる時にそれが目に入るとごちゃごちゃして嫌だからひっくり返してるの」
「へえー、なんて凄いシステム。個人のお宅なのに。あ、あれ?」
ハンガーラックに一着洋服がかかっているのが見えたが、それは見覚えがあるものだ。
「フフッ、気づいた?」
さっと手を伸ばし、白亜はその洋服を身体にあてる。
「ぴ、ピンクシャドウ!」
ピンクシャドウの衣装だった。
「えっと、あの、どういうことですか?」
「フフフッ、バレちゃったらしょうがないね」
「白亜さんも熱烈なピンクシャドウのファンなんですね!」
「なんでだよっ!」
彼女の勘の悪さにずっこけながら白亜は自分で話すことになった。
「ピンクシャドウ(初期)は実は俺なんだ」
「えええええっー!!!」
ミサキの頭の中では、白亜とピンクシャドウがアルゼンチンタンゴを踊っている風景が浮かんでいた。
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