ブルーシャドウ 山本青音(やまもと せいね)編

2/49
39人が本棚に入れています
本棚に追加
/345ページ
暇なのでその女性をチェックする。シンプルなミディアム丈の水色のワンピースに、やはり軽い毛先のミディアムヘア。顔立ちは整っているが目立った箇所はない。癖のない容姿に逆に何か特徴はないかとよく観察しようと思っていると、次々に参加者がやってきた。星を振りまくように黄雅も笑顔でやってくる。 「やあ、青音。今日は頑張ろうねー」 「ああ」 こういう本気の席で頑張ろうという言葉を出せるのは黄雅くらいなもので、それも皮肉に思われないのも彼だからだろう。 参加者が集まり、黒彦が司会に出てくる。最近ますます色気が出てきているような黒彦に女性たちは騒めいている。 (桃香のおかげか……) 昔から黒彦はミステリアスな色気があったが、ここのところはより成熟し、香り立つ豊潤なワインのようだ。 青音は日本に戻ってから、まともに関わった女性は母の桂子を除くと桃香ぐらいだった。そのせいでついつい桃香に執着してしまうのだろうと思い、この婚活パーティの話がきた時にすぐ参加を希望した。 (そろそろ彼女から卒業しないとな) ここで心機一転、恋人、上手くいけば妻を娶りたいと思っている。  4カ所にテーブルが分かれていて、それぞれフルボディ、ミディアムボディ、ライトボディそしてノンアルコールの葡萄ジュースとミネラルウォーターが置かれている。また色々な種類のチーズの盛り合わせもおつまみとして用意されている。 つまり好みの赤ワインとチーズの場所でコミュニケーションをとるという寸法だ。食の好みが合うとカップルが上手くいくだろうという黒彦の提案のよるものだ。 会話を交わしつつ少しずつ試飲し、それぞれ自分の居場所が決まっていく。青音は複雑な味わいのフルボディのワインを愉しんでいた。香りと色と味の確認していると、ハッと本来の婚活という目的を思い出す。
/345ページ

最初のコメントを投稿しよう!