ブルーシャドウ 山本青音(やまもと せいね)編

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 次の約束を交わしてから、青音は佐々木優奈を自宅付近まで送り届け帰宅した。 「ただいま」 ガラガラと引き戸を開けると、パタパタと母の桂子が出迎える。普段は和装で物静かなイメージだが、息子の婚活の事が気になってしょうがない様子だ。 「お帰りなさい。早かったのね。どうだった?」 「ん、まあまあかな」 「まあまあって言うのは?」 「一応次にまた会う約束をする人が出来たよ」 「まあ! 良かったわね! 白亜ちゃんと黄雅ちゃんはどうだったの?」 「あの二人はダメだったみたい」 「ええー? そうなの? おかしなこともあるものねえ」 「まあ俺の方もどうなるか分からないけど」 「それはそうね。でもまた頑張りなさい」 「ん。今日はもうお風呂に入って寝るよ」 「はい、お疲れ様。また話聞かせてねー」 納得した様子で桂子は部屋に戻っていった。その後ろ姿を見送りながら青音も人心地ついた。 のんびりヒノキの湯船につかりながら、優奈の外見と会話の内容を反芻する。 ――『イタリアントマト』を出た後、少し酔いを醒まそうとカフェに入りソフトドリンクを頼む。チーズのおかげで膨満感だった。青音がダージリンを選ぶと、優奈もそれがいいと言うので二人で薫り高いストレートティーを愉しむ。 何でもいいですという受け身な態度ではなく、選ぶものが同じ好みのようで青音は少し親近感を持つ。 また婚活会場でもそうだったが、自分の事をアピールしてこなければ、青音に仕事や年収などの質問もない。 黒彦の話では婚活パーティはもっとアクティブなもので、ガツガツ行った方がいいとアドバイスされていた。黄雅と白亜はもちろんそのアドバイス通りに動かなかった結果が、カップル不成立であろう。 青音も同じようだったが、たまたまフィーリングのあう佐々木優奈のおかげでこうしてカップル成立となっている。 (やはり縁だろうか) 一部の人に言わせると偶然などはなく全て出来事は必然だという。とりあえず青音は成り行きに任せることにする。
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