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「コーヒーは飲まないんですか?」
質問はささやかなことばかりだ。
「たまには飲むけど、紅茶の方がいいかな」
「同じです。眠い時にはコーヒー飲みますけどね」
一言二言話し、また一息つく。会話が弾まないという感じではないので居心地の悪さはなかった。
「アンティークショップの経営って、どんなことするんですか?」
「そうだね――」
青音が骨董品の鑑定をしたり、修理をしたりする話を聞かせると優奈は興味を示し、目を輝かせる。青音はてっきり、経営状況と年収を聞かれると思ったが、聞かれなかった。もちろん聞かれても困ることはないので答えるつもりはあるが、婚活パーティで女性が気にする年収など具体的な話にはならなかった。
「今度良かったら店にも遊びに来て」
「いいんですか? 次のおやすみに行っちゃおうかな」
「優奈さんの休みはいつ? 土日?」
「いえー、それが不定期で」
「ああ、そうなんだ。えっと確かサービス業って名札に書いてたよね」
「あ、はい。ファッション関係でシフトがあって、あの、今、人もいないから、ちょっと安定してなくて。時間もあんまり……」
「そう。僕は一応商店街の休みの日が休みだけど、店は忙しくなければ両親にも頼めるから君に合わせられると思う」
「えー! 嬉しい! いいんですかあ?」
「うん。逆にこまめに連絡を取るほうが苦手だから、ごめんね」
「あ、いいんですいいんです。私もマメじゃないので」
どうやら仕事が忙しい様で頻繁なデートは難しいようだ。しかも女性にしては珍しく、要件以外の連絡をあまりとらなくて良さそうなところは、青音にとってありがたかった。
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