ブルーシャドウ 山本青音(やまもと せいね)編

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 自宅まで送るという青音に、近所のスーパーで買い物をするという口実をつけ別れた。彼が帰ったのを見計らって佐々木優奈はアパートに戻った。 部屋に入りふーっと緊張の息をはき出し、床にしゃがみ込んだ。 「ふあっー!!! つっかれたあっー!!!」 食器棚から常備してある栄養ドリンクを取り出し一気飲みする。 「ぐううぅ! ぷはっ! はあーやれやれ!」 背中のファスナーをやっとの思いで降ろし、ストッキングを丸めないように脱いで横たわる。 「ふー。効いてきた効いてきた」 30分ほどゴロゴロしているとドリンクが効いてきたようで疲労が軽減する。風呂を貯めている間に優奈は青い大学ノートを取り出し、今日の出来事をメモする。 「ワインはフルボディが好き。チーズにも詳しい。えーっと、コーヒーより紅茶派――」 集めたデータを書き終えた頃、湯が貯まったと音声が流れたのでノートを閉じた。  ざぶざぶと洗面器で荒々しく掛湯をし全身を洗ってから、ざぶんと湯船につかる。疲労した身体に温かい湯が浸み込むようだ。 「うー! やっぱ浸からないとねえー!」 土踏まずを揉んでからふくらはぎを触るとパンパンに張っている。 「はあー、ヒール辛かったなあー」 優奈は普段スニーカーしか履かないのでこれからヒールに慣れていかなければと思った。 「間近で見るとかっこよかったなあー! ほんと今回、一生あるかないかの大チャンスだった。成功してよかった! 万歳! 万歳! 万歳!」 誰も見ていないと思い、万歳三唱した後拍手する。この快挙を自画自賛した。 青音とは実際に初対面にはなるが、優奈は以前から彼の事を知っていたのだ。しかし知らないふりをして、青音に近づいた。 なんとかカップルになれたが、これからどうなるかは優奈にも想像することは出来ない。しかし出来る限り長く青音と関わりたいと願っている。
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