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彼女が立ち去った後、ふと青音はあることに疑問を感じた。
「彼女たしかファッション関係でサービス業だったはずじゃ……」
聞いていた職業と今の彼女のベージュのスーツが青音にとってミスマッチだった。きちんとしたスーツではあったがファッション性は?と聞かれると青音にもあまりないという答えになる。
「紳士服を売っているのだろうか」
追及し始めるとキリがないので、そう思うことにした。青音にとって本人が望んで就いている職業であれば特に何でもよかった。
それよりも彼女が古いものに興味があることが嬉しい。また青音の出方を待たず、誘ってくることも好ましかった。
改めて会うと、小作りな顔のパーツも素朴で味わいがあると思った。
「なかなかスルメのように味わいのある人かもしれないな」
スーツの色で思わずスルメを連想してしまい、これは失礼かなと紳士らしく反省する。
周囲の人間に青音の感情は分かりにくいが、彼は今度のデート先である『古代エジプト展』を非常に楽しみにしていた。
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