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商店街の仲間たちが静かに眠りについている頃、佐々木優奈は黙々と歩いていた。肌寒い夜のため、ベージュのスーツの上からグレーのショールを羽織っている。青音は気づかなかったが彼女はスーツにスニーカーだった。
ヒタヒタと歩き、たまに立ち止まり物陰に入る。
「しばらく待機だな」
ふーっと深呼吸をし壁に寄りかかりバッグからゼリー飲料を取り出し、一気に飲んだ。
「よし。もうしばらくこれでもつかな」
2時間はここでじっとしていなくてはならない。退屈さと眠気が襲いそうになると優奈は青音の事を思い出す。
「フー目が覚めてくる。これこそブルー効果かな」
疲れているとき、早く寝たいとき、すっきりしたいとき青音の事を考えると万能薬のように効果があった。
「早く見たい、じゃない会いたいな」
手をこすり合わせながら夜空を見ると、シャープな細い月が青音の伏した瞳のように見える。月に手を伸ばしても勿論届かない。
しかし青音は今や優奈の手が届く範囲にいるのだった。
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