ブルーシャドウ 山本青音(やまもと せいね)編

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 デートの日がやってきた。青音が支度をしていると、母親の桂子がそわそわと周りをうろついた。 「ちゃんとエスコートするのよ? 待ち合わせなの?」 「いや、彼女がここへ迎えに来てくれるよ」 「え? 女性が迎えに来るの?」 「僕が迎えに行くと言ったんだけど、美術館に行くのに通りがかりだとかなんとかで、彼女が来てくれるって」 「まあ、そうなの? 今どきはそういうものなのかしら。お車でもバイクででも迎えに行けばいいのに」 「ああ、彼女はバスで行きましょうって」 「へえ。まあうまく行きそうなら紹介してね。今、紹介とかしちゃってプレッシャーになったりしたらいけないし」 「お母さんは心配性だな。ダメな時はダメだし、いい時はうまく行くよ」 「そうねえ……」 ジャケットを着て後姿を確認していると、店の方から「ごめんください」と優奈の声が聞こえた。 「きたわよ! 急いで!」 「ん、じゃ、行ってきます」 「いってらっしゃーい」 桂子の熱い声援を背に青音は店に出た。 「おはよう、優奈さん」 「おはようございます」 穏やかに優奈は笑んで頭を下げる。カシュクールの白いブラウスに紺のガウチョパンツを合わせている彼女は、洋装なのに和装の雰囲気があり青音は好感を持つ。 「素敵な雰囲気ですね」 もちろん紳士である青音は褒めることを厭わない。 「ありがとうございます。青音さんは和服も洋服もよく似あいますね!」 「ありがとう」 社交辞令のあと、美術館に向けて出発した。
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