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第1話 紅葉色の秋風
ひやりと素肌に触れる秋の朝日を感じながら、今年で15歳となる中学生の綾崎 志穂は街路樹を歩いていた。志穂は黒髪のロングヘアを雨上がりの青空になびかせており、その街並を優しく彩っていた。そんな志穂の声に応えるかのように、秋雨に濡れた木々や花たちも陽気に踊っている。
「もう季節はすっかり秋なのね。特にこの街路樹は優しい自然の香りがするから、いつ歩いても気持ちいいわね……あら? この朱色に彩られている木々は紅葉……よね?」
そう志穂がつぶやきながら見上げた先には、景色を朱色に染めた紅葉の木々がそびえ立っていた。紅葉の葉っぱが一面に広がるその光景は、まさに秋の風物詩と呼ぶにふさわしい。そして紅葉の葉っぱがひらりと空を舞うその姿に、志穂の心もすっかり魅了されてしまった。
「いつか私も紅葉みたいに……華麗に空を飛んでみたいな」
そんなささやかな夢を脳裏に描きながらも、志穂は地面に落ちた紅葉の葉っぱを1枚手の平にのせ、木と背中合わせになるように腰を下ろした。また葉っぱを持つ手をゆっくりと胸に当てていることから、志穂はほんのりと暖かい紅葉の温もりを感じているのだろう。
和やかな紅葉の声を聞く志穂の姿、そして彼女の吐息に耳を澄ませている紅葉――その光景を1枚の絵画にしてもおかしくないほど、神秘的で美しかった。
少女の白い柔肌に朱色の葉っぱが1枚――そんな当たり前の景色は、志穂にとってかけがえのない宝物となった。
そんな紅葉色に染められた秋風の手触りを感じながらも、志穂は今日もゆっくりと街路樹を歩いている……
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