488人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ
異世界 7
私の言葉を聞いた瞬間、皆顔を歪めた。
どうして、そんな顔をするんですか?
私は何か可笑しなことを言ってしまったんだろうか?
分からない....何も分からない。
だって、私は当然のことを言っただけだ...両親に呪いのようにずっと言われてきたことを。
『お前は薄汚い妾の子だ!』
『汚いっ!私に触らないでちょうだい!』
物心ついたときからずっとそう言われてきた。ひょっとしたら、記憶がないだけで生まれたときからずっとそう言われてきたのかもしれない。
どんな出来事も全部私が悪い。それが当たり前。
『くそっ!上司に怒られた....!お前のせいだ!お前が居るだけで俺にストレスを与えるんだ!そのストレスのせいで俺はつまらないミスをして上司に怒られたんだよ!謝れよ!』
『貴方のせいでご近所さんに変な目で見られるじゃない!虐待してるとか噂されるのよ!?全部貴方のせいよ!謝りなさいよ!』
どんな理不尽な理由であろうと悪いのは全部私。
それが私にとっては当たり前のこと。
当たり前のことを口にしただけなのに....何でサタンさんもファーセリアさんもそんな怖い顔をしているんだろう?
私はまた何か間違ったんだろうか?何かいけないことをした?
......いや、違う。私は生まれてきたこと自体が間違いなんだ。両親もそう言っていた。
生まれてきてごめんなさい。間違ってしまってごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
自己嫌悪に陥っていると、目の前に黒い靄(もや)が漂っていた。
なんだろ、これ....?
「サタン!姫の前よ!落ち着きなさい!気持ちは分かるけど、抑えなさい!」
「サタン、落ち着いてくれ。皆、気持ちは一緒だ。ディアナを傷つけた者にはもっと重い罰をくだそう。約束する。だから、今一度気を鎮めてほしい」
サタンさん....?
ソファに腰掛ける私の前には憤怒の形相で佇んでいるサタンさんが居た。
彼の胸あたりから、この黒い靄が発せられている。
今までずっと優しい表情しか見せてこなかったサタンさんがこんな顔をするなんて...信じられない。
最初のコメントを投稿しよう!