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<郷に入りては、と言うけどさあ>
東の大陸にあるフリーデン都市国家領。その国境沿いにある長閑な町は、リベリア公国ともカーナ騎士皇国とも比較的近い位置に存在するため、行商人たちの宿場としても利用されている。
普通の農村などになってしまうと、宿施設など無い場合が殆どだ。だけれども、行商人が行き交うことの多い地には、交易者たちが情報交換をするための隊商宿が存在する。
その隊商宿は商人だけでなく、旅人が泊まることもできる。旅に不慣れな身として、それは本当に助かることだと思う。
三か国の情勢や東の大陸の文化についての情報を聞き出すこともできたし、なによりも外で宵越しをしないで済むのは有難い。
しかしながら――、酒場で喧嘩沙汰を起こしていた商人たちを止めると称し、拳を振るったら怒られたのは解せなかった。
やはり、自身の故郷であるオヴェリア群島連邦共和国と、異国の地では勝手が随分と違うものだと痛感した。
そんなことを、黒髪に紺碧色の瞳を有する青年――、ヒロは考えていた。
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