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<お兄ちゃんの香水>
「ヒロお兄ちゃんって良い匂いするけど、香水の匂いなんだ」
ヒロが香水を使っていたのが意外だと言いたげに、姫は翡翠色の瞳を上げる。そうした物言いにヒロは苦笑いを表情に浮かせていた。
「姫も男のくせにとか、思っちゃう?」
ヒロの言う『男のくせに』という自嘲じみたものは、屈強な海の男たちによく揶揄られる言葉だった。
このような身だしなみに関わることに、男も女も関係無いというのがヒロの言い分ではあるのだが――。一般的に見れば、まだまだ物珍しい部類に入るのだろう。
だが、そうしたヒロの言葉に姫はゆるりと首を振った。
「ううん。大人だなーって、思っただけ」
にっこりと笑みを見せて姫は言う。その返弁にヒロの紺碧色の瞳が瞬いた。
「私ね。香水はまだ早いって言われているの。もっと大人になってから、だって」
「あー……、そういうことか」
言われてみて納得した。確かに香水を子供が使うのは早いだろう。そして、その言いつけを心に留め、大人びて背伸びもせずに守っている姫を微笑ましく思う。
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