推理作家と手紙

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USBメモリは何の変哲もない市販されているもので、『8GB』とデータ容量が書かれている。 気になったが、取り敢えず手紙の方も確認しようと手に取った。 「なんだ、これ」 思わず口から漏れたのはそんな言葉。 手紙だと思って見たそれには、アルファベットと数字、記号が書かれていた。 それもかなりデタラメで、英語や他の外国語を書いているようでもない。 本当に『なんだ、これ』としか思えない、意味不明な英数字と記号の羅列だった。 パソコンを使って書かれているその文字は俺にはさっぱり理解できない。 「暗号、か?」 名もなき読者からの挑戦状だろうか。 それにしても理解できない。 不規則な文字列を見ていると頭がいたくなってくる。 もし暗号だとしたら、俺が解読するには時間がかかるだろう。 「………………」 少し考えてから、ビールがぬるくなる前に飲んでしまおうと決めた。 暗号じみた文章の書かれた手紙とUSBメモリを封筒に戻し、テレビをつける。 ビールを飲みながらコンビニの焼き鳥に(かじ)りついた。 温めれば良かったか……なんて思っていた時、テレビのニュースが耳に入った。 『昨夜、東京都×××の公園で銀行員の成瀬(なるせ)真代(まよ)さんが遺体で発見されました』 キャスターがニュースを読み上げる。 派遣先の仕事場でも、昼休みにちらりと聞いたニュースだった。
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