推理作家と手紙

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たしか、三十代の銀行員女性が帰宅途中に何者かに襲われて殺害された……そんな内容だったはずだ。 場所は俺の最寄り駅から二駅先、駅から程近い公園のようだ。 『成瀬さんは複数箇所刺されており、そのうちの一つが心臓まで達していました。警察では、怨恨と通り魔、二つの線から捜査しています』 刑事ドラマのような物騒な事件だ。 ただの通り魔なら何回も執拗に刺すことはしないだろうから、怨恨の可能性の方が高いだろうなと思う。 ――仕事絡みか、対人関係か……動機なんてそんなもんだ。 俺は心の中でそう呟くと、缶に残っていたビールをイッキ飲みした。 ニュースのせいで二本目のビールを飲む気分にもなれず、冷蔵庫にしまう。 ふと、テーブルに乗せたままの封筒が気になった。 手にとって確認すると、切手の消印がニュースで出ていた×××になっている。 銀行員の女性が殺害された公園から程近い郵便局……そこで処理されたものなのだろう。 偶然の一致かもしれないが、何だか気味が悪い。 俺は少し考えてから、その郵便局に行くことにした。 ちょうど明日は派遣の仕事も入っていないし、もやもやを抱えたままでは執筆もままならない。 そう決めたので、今日はもう寝ることにして電気を消した。 念のため、戸締まりを確認してしっかりと鍵をかける。 封筒を枕元に置くとベッドに入る。 横になるとアルコールの回りが早くなり、気が付くと寝ていた。
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