推理作家と女子大生

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推理作家と女子大生

翌朝、軽く朝食をとった後、事件があった公園近くの郵便局まで向かう。 封筒と手紙を鞄に入れたが、USBメモリだけは家に置いてきた。 駅から程近いその公園は、今日も警察関係者や報道陣がいるようだ。 公園の横を通り抜け、目的地である郵便局にたどり着く。 「…………」 何となく来てみたものの、郵便局で手紙の差出人がわかるわけではない。 そんなことにも思い至らず、俺はため息をついた。 「ATMで金を下ろすか……」 特に郵便局に用はなかったが、所持金も心許(こころもと)なくなってきているのでATMを利用させてもらった。 郵便局を出ると、一人の女性が目にはいった。 明るめの栗毛に(とび)色の瞳。歳は二十くらいだろうか。 物憂げなその姿は物語のヒロインのようだと思ってしまう。 心の中で、作家なのに語彙(ごい)がないなと自分で突っ込みつつ、彼女を凝視しないように気を付けた。 四十過ぎの中年男(俺だ)が、二十そこそこの女性をじろじろ見ていたら通報されかねない。 チラ見しただけでも痴漢扱いされるご時世なのだ。 冴えない中年男は、隅で大人しくしているに限る。
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