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推理作家と手紙
俺、相原雅臣はミステリ作家として華々しくデビューをした。
それが今から五年前。処女作は重版がかかり、ドラマや映画の話も出ていたが、それ以降は出した本も大して売れず……。
今は派遣の仕事をしながら執筆を続ける寂しい日々が続いている。
担当編集者も、デビュー当初より俺に連絡をくれることが少なくなった。
先日の連絡も締め切りの確認だけ。激励の言葉も何もない。
インターネットのレビューや感想など、怖くて見れないので、たまに届くファンレターだけが生き甲斐のような生活になっていた。
その日も派遣の仕事を終え、たまにはビールでも飲もうとコンビニで買い物をしてからアパートに戻った。
郵便受けには夕刊と一通の手紙が入っている。
俺はそれを取り、玄関から部屋へと入っていく。
「何だ、これ」
手紙の封筒を手に取ったとき、思わずそう呟いてしまった。
薄い封筒、その中に何か固いものがある。
代わり映えしない茶封筒には、俺の名前と住所が印刷されていた。
差出人の名前はない。
何だか、嫌な予感がする。
封筒越しに触った感じだと、危ないものではなさそうだが……。
「開けて、みるか」
テーブル上のハサミを取り、慎重に封筒を開けた。
そっと中を覗くと、封筒には一枚の手紙とUSBメモリが入っている。
目視で確認したので、封筒を傾けて中に入っていた手紙とUSBメモリを取り出した。
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