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CASE⑨ 理不尽
だって。絶対しないと思ってたんだ。
オレはともかく、朔は四楓院先生って恋人がいる身の上だから、先生のことを想えばこそするはずないって、そう信じて疑わなかったのに。こんなのってあんまりだ。
「どうしてオレはこんな壁際に追い詰められているのかなー!?!?」
「……っるせぇな。大声出すな、バカ志賀」
「バカはどっちだよ!? おかしいでしょ!? なに本気になってんの!? 四楓院先生になんて言うつもり!?」
「……アイツならヘラヘラしながら〝まっ、しゃあないよなぁ〟って言うだけだろ」
「ンンッ!! 否定できないけどっ!! それとこれとは別!!!」
「……めんどくせぇ」
ふにゃりと笑う先生の顔を思い浮かべたら喉が詰まった。そんな詳細な予想、いまは要らない。
眉間にこれでもかってくらいシワ寄せて、オレを睨む朔は盛大に溜息をつく。ちょっと待ってよ、オレのが溜息つきたいよ。
「だいたいさ、なんでオレがされる側なの? こういうのってもっとこう……話し合いとかジャンケンとかそういうので決めない?」
「……お前のが背が低い。あと、顔。髪も長ぇし女みてぇじゃねぇか」
「ひっど!!! そんな風に思ってたの!?」
信じられない。背が低いってたった3センチなのに! 顔はたしかに姉貴とか母親に似てるけど……髪が長いのは関係なくない!? 朔だって長いじゃん!
「いい加減観念しろよ」
すでに身を引けないくらい追い詰められてるのに、朔はお構いなしに迫ってくる。眉間のシワは一層深くなってるのに、そういう不機嫌そうな顔が世界一似合ってしまうんだからタチが悪い。
本当はキスしたいなんて、これっぽっちも思ってないクセに。
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