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CASE⑪ 触れさせたくない
『朔の欠点らしい欠点って、先生のことになると見境なくなって後先考えないところだよね』
頭の中を過る、親友の言葉。
煩い、オレだって好きでそうなってるワケじゃねぇ。
だいたい、コイツが悪い。
先公のクセに緩みすぎなんだ、誰にでもヘラヘラしやがって。
なにが「俺、たいしてモテへんから」──だ。自覚ねぇにもほどがあんだろ。
「ッ、ちょ……あき、づき? どないしたん?」
「…………」
「な、黙ってたらわからへんやん? もう午後の授業始まっとうし、ガッコで〝こういうこと〟はせぇへんて……」
「そんな約束した覚えねぇ」
「そ、そやったっけ?」
「アンタが勝手に〝しない〟って思い込んでるだけだろ」
オレがベッドに膝を乗り上げると僅かに沈んだその場所がギシッと鈍い音を鳴らす。
こんな風にコイツをここに追いやるのは二回目だ。「二度とやるか」──そうは思っちゃいたが、やんなきゃなんねぇような状況を作ったのは、ほかの誰でもねぇ〝倭斗自身〟なんだから、自業自得だ。
ネクタイごとシャツを乱暴に引っ張ったせいで首元が大きく開いている。くっきりと張った鎖骨の上に残るキスマークは、倭斗が保健室に戻ってきた時、オレが強引につけた。
なのに「なんや秋月、寂しかったんか?」とかぬかしやがるから。
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