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「誘っといておあずけはヒドイっしょ!」って言ったら「誤解させてゴメン」って謝ってくる。
ワケわかんなくてなんで来たのか理由を説明してもらった。そしたら「バイトで頑張りすぎて身体が痛い。マッサージに行きたいけどあられもない声を出してしまうのが恥ずかしいので代わりに頼みたい。恋人なら声を聞かれても平気だから」って。
なんだそりゃ、って思ったけどリュウさんのエロい声をマッサージ師のオッサンにタダで聞かせるのも嫌だったから、オレがやることにしたんだ。そんで、今に至る、的な。
「フツーにマッサージ行ったほうが良かったんじゃないスか?」
リュウさんを後ろ側からハグしてそんな風に言ってみる。サラサラした髪が横に流れて日に焼けてないうなじが見えた。
「……何聞いてたの? 無理に決まってるでしょ。だからちーちゃんに頼んだのに」
〝恋人にならエロい声聞かせてもいい〟って言ってるようにも聞こえるんスけど……リュウさんのこだわりがよくわからない。
頼られるのは嫌じゃないけどなんつーか、気にするトコそこなんだ? みたいな。
「まぁ、マッサージしてる最中ずっとあんなエロい声出されてたら、マッサージ師の人も赤面モンっスよねぇ」
オレ得の恋人特権だと思えば悪い気はしないケド、こっちだって色々我慢しなきゃなんないのがツライ。でもリュウさんはオレが我慢してるなんて、これっぽっちも思ってないんだろうな。そう思うとなんかジワジワこみ上げてくるモンがある。
「エ……! 出したくて出してるわけじゃ……!!」
オレの言葉に納得いかなかったみたい。リュウさんが勢いよく振り返る。
いつもは柔らかく下がってる目尻が、ちょっとだけ強気に上がってるけど、ちっとも怖くない。
むしろどんな顔見せてもらっても、オレには可愛く見える。こーゆーの、〝ホレた弱み〟って言うんかな。
「ハイハイ。まだ退室まで時間あるし、これから思う存分イチャイチャさせてもらいますねー」
こっち向いたリュウさんを正面から抱きしめる。ちょっとだけ着崩れた襟元を引っ張って、くっきり浮いた鎖骨にキスする。オレがリュウさんを愛する形が誰からの目にも見えるようにしっかり痕を刻んだ。
転ばされてもタダじゃ起きないのがオレ。時間目一杯までリュウさんのこと、〝タンノウ〟しちゃうもんね。
覚悟してよね? リュウさん。
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