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「!?……えっ!?」 階段を上りかけていた私は、一体、何が起こったのか分からず、カレに手を引かれた状態で、そのまま連れていかれる。 「キミの受験会場、ソッチじゃない。……悪いけど、受験票、一回確認して貰える?……キミの会場、この階じゃない?」 溜息混じりにそう言うと、カレはパッと掴んでいた私の手を離した。 私は先程、鞄の中に入れた受験票を取り出して、壁に貼られた各教室への案内表示と自分の受験番号を照らし合わせる。 「……あ……」 「……やっぱり……」 二人同時に発言した。 私の受験会場は4階ではなく、この階(3階)だったのだ。 何度も何度も見て確実に覚えていた筈の第一志望の大学の受験番号ですら、私の記憶は怪しくなっていた。 それどころか、滑り止めだった他大学の記憶とごっちゃになり、そこの受験番号と脳内で勝手にすり替わっていたのだ。 「……」 受験票を『落とし』てしまった私は自分でも信じられない程、精神的に大打撃を受けていたらしい。 普段、【ジンクス】なんてモノは殆ど信じない私だが、【受験=落とす】という構図が成り立ってしまったのは、非常によろしくなかった。 第一志望校の【受験】という異常に緊張感が伴う、全く普通ではない状況下で、自分の不注意から『縁起でもない』ことを仕出かしてしまい、私の今の心理状態は最悪だったのだ――――。 (……こんなんで、ほんまに試験、受けられるん?……それに、こんなん受けたとこでーー) そこまで考えたところで、カレの言葉に遮られた。 「……とにかく、コッチ来て」 そして、カレは再び私の手首を掴んで、グイッと自分の方へと引っ張ったのだった。 # 【311】と書かれた大きな教室の入り口でカレは止まった。 「この教室だから」 そう言って、カレは入り口のドア部分に掲示された受験番号の範囲を見て、その中にカレの番号がきちんと入っているのを確認したのか、頷く。 私も手に持った受験票と照らし合わせて、自分の番号が範囲にあることを確認した。 (……このヒトも受験会場、この教室なん……?……あ、だから、私の受験会場が間違ってるってことに気付きはったんや……) 私の受験番号とカレの受験番号が近かったから、同じ会場だと気付いて、カレはついでに私を教室(ココ)まで連れてきてくれたのだ。
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