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受験生と各々(おのおの)が持つ傘とで歩道が大混雑する中、志望する大学が自分の視界の端に捉えることが出来る位、近付いてきた時のことだ――――。 (……寒いし、少しでも(はよ)ぉ、受験会場に着きたいわぁ……) そんなことを考えたのが大間違いだった。 大学構内で迷わないように、と、受験会場の建物の位置を確認するのに、案内の入ったクリアファイルを鞄から取り出した時のことだった。 薄いレモンイエロー色の何かが、ひらひらと落ちていったような気がしたのだ。 (……え、今の色……) 家の中でその辺にあった、古くなって、少し緩くなってしまったクリアファイルを使用してしまったのかもしれない。 左手で傘を持った状態だったから、緊張や寒さも手伝ってクリアファイルをきっちりと右手で握っていなかったのかもしれない。 手袋とクリアファイルの相性が悪く、お互いにツルツルと滑っているにもかかわらず、手袋を()めた手でクリアファイルを持ってしまったのが悪かったのかもしれない。 そもそも、何故、クリアファイル毎、鞄から取り出したのか――――。 だが、今更、原因なんてどうでもいい。 ()かがクリアファイルから落ち、ひらひらと舞うように受験生で大混雑する人混みの中へと消えて行った気がした。 (……え……。今のまさか、……受験票!?) 慌ててクリアファイルの中を確認するものの、受験票が……、無い。 今朝、何度も何度も受験票を確認してから家を出発したのだから、家に置き忘れた筈がなかった。
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