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私はパニック寸前だった。
いや、もう既にパニックになっていたのかもしれない。
(……ど、どないしたらええん……?この行列が途切れたら戻ってみる?……でも、そんなことして時間、間に合うんやろか?それよりも、どっかへ連絡ーーって一体、どこにしたらええん……?)
昨晩からの大雪で近畿地方の交通機関は、今朝から半数近くが麻痺した状態だった。
かなり余裕を持って家を出た筈だったが、最寄りの駅に到着した時には、あまり余裕が無い時間になっていた。
腕時計を見ると時計の針は刻一刻と進んでいき、その様子は私を余計に焦らせる。
先程からの必死の呼び掛けにも全く手応えがなく、焦りに更に輪をかけた。
目が潤んできて視界が歪み、鼻の奥がツンとしてきた。
(……な、泣いてる場合ちゃうしっ!今、泣いたって仕方ないんやからっ!!で、出来る限りのことはしぃひんとっ!)
私は唇を噛み締め、念の為に持ってきていたスマホを鞄の中から取り出して、どこに連絡したら良いのかネットで検索をかけて調べようとした。
手袋を外して、スマホの画面を触る。
しかし、気が動転しているせいか、指が震えてスマホの文字を入力するのすらままならない。
その時だ――――。
「……コレ、君の?」
視線を落とす私の前に大きな黒い靴が見え、頭上から少し低目の男の人の声が聞こえてきた。
そして、目の前に差し出されたモノに息が止まりそうになる。
少し踏まれたのか多少の汚れはあったが、今、正に私が必死になって探しているモノが、目の前に差し出された大きな掌の上に乗っていた。
何に引き変えてでも、探しに行かなければならないモノがそこにあった。
「……」
息が止まりそうになった。
涙が出そうになった。
(……な、泣いてる場合やなくて。先にこの人にお礼言わなあかんやんっ!)
バッと顔を上げ、息を呑む。
そこには、少しだけ息を切らし白い息を吐く、黒いコートを羽織った制服姿の男子高校生と思われる人物が、牡丹雪が舞う中、傘を差して立っていた――――。
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