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公園
公園のベンチで朝から腰を降ろし空を見上げていた。
俺は生き甲斐を失ってしまった。
仕事に明け暮れ苦楽を共に過ごした同僚が過労で死んでしまったからだ。
その時の感情が今になって甦る。
俺には妻と娘がいる。
そんな家族を支える為に仕事をしていたが、今の俺は無気力だ。会社を無断で休み、家から少し離れた公園のベンチでボォーと空を眺めている。
自分の心と同じように雲が空を覆っていた。
夜になっても、まだベンチに腰を掛けたまま座っている。今の会社で働くのがバカらしくなっていた。
明日、会社に辞めると伝えるつもりだ。ふと時間を見る。時計を見るのを忘れていた。
もうすぐ夜中であった。
「帰ろう」
気分が乗らないままだが遅くなると妻が心配する。
娘は、まだ小さく既に寝ているだろう。
ベンチから立ち上がり俺は、ゆっくりと歩き出す。
トボトボと家の近くまで近づくと妻が家の前で立っていた。
「おかえり。あなた。今度、わたしも公園に連れてってくださいね」
明るい笑顔で、そう言う妻。
その言葉に俺は救われた。妻は俺が無断で会社を休み公園にいる事を知っていた。夜空に雲は無くなり大きな月が見えている。その月明かりの下で俺は妻に抱きついた。
「分かった今度一緒に行こう」
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