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隣の席のアンナちゃんは、僕が困っているのに気づいていたようだったけど、ずっと顔を上げずに、僕にお願いしてくる。
「海斗くん、一生のお願い!!」
アンナちゃんは大きな声でそう言った。……こんなところで一生のお願いを使ってしまうんだ、と僕はどこか呆れてきて、そこまで言うなら、行くだけ行って、すぐに帰ろうと思い、
「分かったよ。じゃあ、行くよ」
そう告げると、アンナちゃんはキラキラと目を輝かせて、
「ありがとう! じゃあ、明日、学校が終わったら、みんなで行くから、一緒に行こうね!」
アンナちゃんは嬉しそうにはしゃいでいた。僕はどうして女の子は誕生日会なんかにこだわるんだろうと、不思議に思いながらも、なんだか、本当に楽しみにしている様子のアンナちゃんを見ていると、心が締め付けらてきた。
僕は、お母さんがいなくなってから、誕生日会なんてしたことがなかった。
お父さんが、僕が手料理を食べられないことを知ってからは、チキンを沢山買ってきたり、ケーキを買ってきたりしてくれていたけど、お母さんがいたときと違って、二人でもくもくとそれを食べるだけの日になってしまった。
きっと、お父さんも僕を気にしているのだろうけど、僕はその気遣いすら、余計なお世話だと思ってしまっていた。
きっと、今の僕は可愛くない子供なんだろう。でも、僕だって、こんな風になるなんて思っていなかったし、大人の事情とかいうものは、僕には何も関係ないのに。
そうやっていつも不貞腐れてしまうからか、お父さんは僕の機嫌を取ることも、辞めてしまった。
そう。僕は、ご飯が食べられなくなっただけじゃなく、誰かと一緒にいるということを共有することも失ってしまったんだ。
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